こんにちは。
オンライン読書会 シーズン6『言葉とは何か』第3回(2023年1月11日@Google Meet)の報告をします。
メンターは、東京大学人文社会系研究科基礎文化専攻言語学研究室 博士課程の佐藤らな さんです。
今回読むのは、『言葉とは何か』(丸山圭三郎著、ちくま学芸文庫)の73ページ~81ページ。
参加者の中の希望者が交代で音読していきました。
まず、前回からの“宿題”です。
ソシュールの用語として知られる「ラング」 langue は、個々の言語共同体で用いられている多種多様な国語体(ベタにまとめると、文法や語彙)。
「パロール」 parole は、特定の話し手によって発せられた実際の言語使用。
ラングとパロールは相互依存の関係にあり、ラングがあるからこそパロールが伝わる一方で、使う(つまりパロール)人が増えるとそれがラングに含まれます。
メンターの佐藤さんが例に挙げたのは「老害」という言葉です。
意味を問われて参加者が答えたのは、「害になる老人」。
「これだから若いやつは、みたいな」
「列に割り込んでくる老人」
「女性だとヒステリック系が多い気がします」
「今の政治家」
「具体的な例を挙げ出したらキリがないイメージです」
いろいろな意見が出ました。
しかし、もともとは、権力者に老人が多いと若い人の意見が取り入れられず組織が硬直化してしまう、というような意味合いの言葉でした。
それが、一般の老人にまで広げられて使われるようになっていることがわかりました。
佐藤さんは、日本語の形容動詞と名詞の連続性について研究しています。
例えば「天使すぎるアイドル」や「めっちゃ大阪」のように、名詞なのに程度性を持つ表現ってありますよね。
「+すぎるなら、やばすぎる、エグすぎるとかもですか?」
と、ある参加者が発言しましたが、「やばい」「エグイ」は形容詞なので、ちょっと違います。
今回、佐藤さんが挙げた例は「優勝」。
「今日推しグルのライブ行ってきたんだけど、うちの推しのビジュ優勝すぎる。結構前のほうで見れたの最高すぎて泣く😭」
のような表現、YouTubeやTikTok、X(旧Twitter)のあちらこちらに落っこちています。
ピンとこない参加者が、
「No.1みたいな感じ?」
と問うと、別の参加者が、
「仮に競っているとしたら今までであって、その中で一番の何かに対して優勝と言うのかもしれないです」
と答えるなど、盛り上がりました。
まさに、メンターがプロフィールで語っていたように、「ことばについて色々と考えてみることは、誰にでもできるうえに、ハマってしまうと面白くて抜け出せない「沼」」ですね。
なお、さきほどの表現を一般的な表現に翻訳すると、
「今日応援しているグループのライブに行ってきたのですが、私が応援しているメンバーの容姿(ビジュアル)が自分史上最高に好みでした。かなり前のほうの席で鑑賞できたことがとても嬉しくて、涙が出てきました」
となります。
佐藤さんによると、優勝は、名詞+すぎるの例とも言えますが、「優勝」の意味自体が「第一位で勝つこと」から単に「とてもいい」や「とても好ましい」などの評価的な意味に変化している、とのことでした。
さて、本の内容に入りますと、「構造主義と言えばソシュールでしょ」と思われがちですが、ソシュールの『一般言語学講義』に「構造」という言葉は3回しか出てきていないそうです。
意外です。
その代わり、ソシュールは「体系」という言葉を使っていて、部分としての個ばかりではなく、全体を見よう、と考えているのだそうです。
第1回で見た、言葉とは単なる事物の名称のリストではない、という指摘につながりますね。
ヤーコブソンの失語症患者の研究に関連して、連合関係がこわれた例文、
「机の冬は、病みあがりの色できしみつづけ」
を、佐藤さんが、連合関係が適切な例文として、
「北海道の冬は、餅の色で染まりつづけ」
と表現したのが、とても素敵だと思いました。
第4回(1月18日20:00-21:00)は、Ⅱ言葉とは何か 6言葉と物(ちくま学芸文庫でp90-99)を読みます。
申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。
参加費は無料、事前に本を読んでおく必要はありませんので、お気軽にご参加ください。
THINKERS(シンカーズ)
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