オンライン読書会 シーズン5 第4回の報告

こんにちは。

オンライン読書会 シーズン5『三国志演義』第4回(2023年10月9日@Google Meet)の報告をします。

メンターは、片倉健博 日本大学文理学部 中国語中国文化学科 助教です。


まず前回の補足として、『三国志演義』の人物イメージを学びます。

諸葛亮は智の極み、曹操は奸の極み、関羽は義の極み。

日本でもよく知られている魯迅が『中国小説史略』で『三国志演義』について、

「人物の描写についてはすこぶる欠点がある。劉備の温厚長重を表そうとするあまり偽物くさく、諸葛亮の智謀を述べて妖怪じみている。ただ関羽については優れた表現が多い」

と書いているそうです。

前回、メンターも、

「『三国志演義』の諸葛亮は、なんでもお見通しで、内心では、周瑜なんて取るに足らない人物だと思っているのです」

と言っていましたね。

私(代表渡辺)は、現在放映中の実写ドラマ『パリピ孔明』で描かれている諸葛亮のほうが好きだなあ…


さて、今回読むのは、井波律子訳『三国志演義』(講談社学術文庫、2014年)の第2巻の、まずは366ページ~372ページ

今回も、かの有名な赤壁の戦いを読んでいきます。

参加者の中の希望者が交代で音読していきました。


後に蜀漢を創業する劉備、呉の孫権の同盟軍、天下統一を目指す曹操軍の両軍は、長江に沿う赤壁で対峙しますが、物量で劣る同盟軍は、計略を使うしかありません。

しかし、直近2つの計略について、ひっかかったことに気付いている曹操の警戒心は強く、よほど用意周到な策でなければ信じさせることができません。

前回、孫権から全権を委ねられた周瑜が、偽りの降伏をしてきた曹操のスパイたちの前でわざと老将軍の黄蓋と口論し、黄蓋の背中を杖で50回打たせ、ひどい傷を負わせます。

これが「苦肉の策」であると見破った、黄蓋の友人であり、呉の参謀である闞沢(かんたく)が、黄蓋の偽りの降伏文書をもって、曹操陣営に赴きます。

第2回で読んだ官渡の戦いの際、敵軍の参謀・許攸(きょゆう)が本心から降伏してきたとき、苦戦を強いられていた曹操は許攸に裸足で駆け寄り、大歓迎します。

しかし今回、優勢な曹操は、闞沢に対して横柄な態度を取り、あれは「苦肉の策」だったのではないかとさえ言います。

しかし闞沢は毅然とした態度を貫き、折よく届いたスパイたちからの報告の助けもあって、曹操は闞沢に謝罪し、黄蓋が本心から降伏するつもりだと信じます。

参加者からは、「心理戦ですね」という感想が出ました。

駄目押しとして、同盟軍に戻った闞沢は、何知らぬ顔で曹操のスパイたちと酒を飲み、彼らを使って曹操に、黄蓋の降伏を完全に信じ込ませます。


続いて読むのは、414ページ最後の行~421ページ

前回読んだように、周瑜も、劉備の軍師・諸葛亮(諸葛孔明)も、大軍を有する曹操を破るには火計しかないと、考えていました。

曹操の大船団を火攻めにするため、二人はさらなる策を講じ、ついに曹操は大敗北を喫するのです。

官渡の戦いも赤壁の戦いも、曹操が、降伏してきた者を受け入れたことが勝敗を決しました。
しかし、官渡の戦いでは、強い敵軍から弱い曹操軍への、本心からの降伏(結果、曹操軍勝利)、赤壁の戦いでは、弱い同盟軍から強い曹操軍への、偽りの降伏(結果、曹操軍敗北)と、降伏者の役割や勝敗が反転しています。

メンター片倉先生の解説で、『三国志演義』の練り上げられた構成がよく理解できました。


これでシーズン5は終わりますが、読んだ個所に登場しなかった劉備や関羽などに興味をもった参加者は、

「誰がどこの誰だか整理してみたいと思いました」
と言っていました。

しかし、『三国志演義』(講談社学術文庫)は第4巻までありますし、日本語に訳されているとは言え、自分ひとりで読むのはなかなか大変です。

そこで、メンターがおすすめするのは、『三国志』(全3巻)(岩波少年文庫)や『三国志』(全7巻)(講談社青い鳥文庫)。
みなさんもぜひ読んでみて、魏・呉・蜀の三国鼎立を見届けてくださいね。


シーズン6の日時、読む本が決まりましたら、ご案内します。

申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。

参加費は無料、事前に本を読んでおく必要はありませんので、お気軽にご参加ください。




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