こんにちは。
オンライン読書会 シーズン6『言葉とは何か』第4回(2023年1月18日@Google Meet)の報告をします。
メンターは、東京大学人文社会系研究科基礎文化専攻言語学研究室 博士課程の佐藤らな さんです。
今回読むのは、『言葉とは何か』(丸山圭三郎著、ちくま学芸文庫)の90ページ~99ページ。
参加者の中の希望者が交代で音読していきました。
過去3回では、「ランガージュ」「ラング」「パロール」「連辞関係」「連合関係」など難しい用語を学んできました。
第1回で、「言葉とは物や概念の呼び名である」という常識は間違っている、と言われて、びっくりしましたが、3回にわたって読んでくると、たしかにそうだな、と思えるようになりました。
かつては、先に物や概念があって、人間が名前をつけた、と考えられていましたが、言葉とはそうした、単なる事物の名称のリストではない、既存の事物や概念と一対一の対応をしているわけではないのです。
つまり本文によれば、「言葉は、それが話されている社会にのみ共通な、経験の固有な概念化なのです」。
もちろん、「それぞれの言語によって分節される概念以前の現実」は同じです。
「ただ、私たちがこの言語外現実を把握し、私たちを取り巻いている世界を区切り、グループ別に分け、カテゴリー化するのは、言語を通して」なのです。
第1回で見たように、虹は、日本語では七色ですが、英語では六色に区切り、バッサ語という言語では二色にしか区切らないのだそうです。
また、日本語では年上、年下を含意しない、男の兄弟を表す言葉はありませんが、英語では兄と弟をまとめて brother と、フランス語では frère と言います。
この場合、 brother や frère は兄や弟の上位概念ですが、日本語だと、「兄弟いる?」と聞かれて妹だけいる場合でも、「兄弟いるよ」と答えることってありますよね。
そのように、ある言葉が本来の意味よりも広い意味を示すことを「シネクドキ」(堤喩)と言うのだそうです。
「犬猫」が、犬と猫以外の動物も含めて、ペットという意味で使われることもあります。
また、「カットバンちょうだい」と言われてバンドエイドを渡しても「違うよ、カットバンがほしいの」とならないのは、カットバンやバンドエイドは商品名ながら、絆創膏全体を表す言葉になっているからでしょう。
そうしたシネクドキも含めて、それぞれの社会(言語)でそれぞれのやり方でカテゴリー化が行われているということかな、と思いました。
このカテゴリー化についてですが、失語症患者が言葉を失うと、抽象能力も失ってしまうのだそうです。
「びん」という言葉を失い、大小さまざまな形をした何本かのびんに共通した「びん」というものがわからなくなります。
そうなると、それぞれのびんに、ひとつひとつ名前をつけないと区別できません。
別の説明によれば、失語症患者の周囲の世界は、雑多な色が一面にぬりたくられている状態だそうです。
彼らは、あらゆる微妙な色のニュアンスをカテゴリー化してまとめることができません。
「失語症患者は、青色も紺色も藍色も全部青色として認識してしまうということですか?」
という質問に対して、メンターは、
「逆ですね。言葉を失い、区切りをどこにつけたらわからないのです」
と答えました。
「難しいですねw」
に対して、メンターは、
「言語学は、自分が見ている世界をいったん壊さないといけないところが難しいのです」
と答えました。
最後にメンターはニカラグア手話について話しました。
1980年代、ニカラグアの学校に聴覚障害を持つ少年少女約400人が集められ、共同生活を送るようになり、それまで手真似以外のコミュニケーション手段がなかった彼らの中から、複雑で洗練された言語が生まれました。
彼らの中のひとりは、
「言語で世界がはっきりした」
という趣旨のことを語ったそうです。
彼は言語を学び、自らも生み出しながら、周りの世界を区切り、カテゴリー化していったのだろうと思います。
参考動画
ある参加者が述べた感想、
「いつも使っている言葉には背景がある。言葉は深い」
に心から同意します。
次回は読書会ではなく、(仮)学術系Vtuberと学ぶ会シーズン1となります。
分野は生物(生命科学)、日程は3/11,18,25 4/1(月)の20~21時です。
詳細は後日、お知らせします。
申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。
参加費は無料、予習は不要ですので、お気軽にご参加ください。
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