オンライン読書会 シーズン5 第3回の報告と第4回の予告

こんにちは。

オンライン読書会 シーズン5『三国志演義』第3回(2023年10月2日@Google Meet)の報告をします。

メンターは、片倉健博 日本大学文理学部 中国語中国文化学科 助教です。


さて、今回読むのは、井波律子訳『三国志演義』(講談社学術文庫、2014年)の第2巻第四十六回より、354ページ最後の行~365ページ。

かの有名な赤壁の戦いに入ります。

参加者の中の希望者が交代で音読していきました。


後に蜀漢を創業する劉備、呉の孫権の同盟軍、天下統一を目指す曹操軍の両軍は、長江に沿う赤壁で対峙します。

孫権から全権を委ねられた周瑜は、劉備の軍師・諸葛亮(諸葛孔明)の才能を危険視しながらも表面上は協力します。

同盟軍では、曹操から10万本の矢をだまし取るなど、曹操との決戦に備え、準備は着々と進んでいます。

そんな中、周瑜と諸葛亮は酒席において、曹操を破る策を、めいめいの手のひらに書いて見せ合います。どちらにも「火」と書かれていて、二人は大笑いします。
大軍を有する曹操を相手にするには火計しかないと、二人が二人とも判断したのです。

諸葛亮は、

「思うに、曹操はこれで二度、わが方の計略にひっかかったとはいえ、警戒していないに相違ありません」

と言います。

ここで質問が出ました。

「二度計略にひっかかったとは、どれのことですか?」

メンターの片倉先生が、待ってましたとばかりに回答します。

普通に読むと、直前に書かれている、曹操側の水軍の要である人物を曹操に疑わせ、殺させた件、曹操から10万本の矢をだまし取った件、の2つの計略を指しているように読めます。

ただ、その2つの計略については曹操はひっかかったことに気付いており、さすがに警戒しているはずです。

先生も気になって、『三国志演義』底本(第1回で説明した毛宗崗本)を読み直し、毛宗崗の批評(コメント)に、「二度計略にひっかかったとは、火を使った計略を指す」と書かれているのを発見したそうです。
読んでいる訳本で言えば、だいぶ前の第三十九回、第四十回のエピソードになります。

質問者は、

「周瑜と諸葛亮が手のひらの火の文字を見せ合って笑ったように、先生と同じところが気になったのが嬉しいです。たしかにマニアックですけど」
と言っていました。

さて、直近2つの計略については、ひっかかったことに気付いている曹操の警戒心は強く、よほど用意周到な策でなければ信じさせることができません。

そこで、偽りの降伏をしてきた曹操のスパイたちの前で、周瑜はわざと、老将軍の黄蓋と口論し、カンカンに怒って(怒ったふりをして)黄蓋の背中を杖で50回打たせます。

黄蓋の背中からは血が噴き出し、何度も気を失うほどでした。
スパイたちからこの様子を伝え聞いた曹操は、のちに、黄蓋の偽の降伏を信じ、 惨敗するに至るのです。

これが諺として有名な「苦肉の計」です。

孫権の父の代から仕える老将軍、黄蓋の忠誠心に、参加者も感服していました。


ところで、読んできて気になったのが、諸葛亮が「笑いながら言った」というくだりが何度も繰り返し出てきたことでした。

文脈的に朗らかな笑いでないのはたしかです。

むしろ逆に諸葛亮が嫌な奴に見えます。現在放映中の実写ドラマ『パリピ孔明』の諸葛亮は、とてもいい人に見えるのに…

この点をメンターに質問すると、

「この笑いは冷笑です。『三国志演義』の諸葛亮は、なんでもお見通しで、内心では、周瑜なんて取るに足らない人物だと思っているのです」

ということでした。

参加者は、

「ある意味、可哀想な孔明ですね。なんでも分かってしまうのはつまらなさそうです」

と感想を述べていました。


第4回(10月9日20:00-21:00)は、「可哀想な孔明」が曹操をいかにして惨敗させるのかを見ていきます。

申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。

参加費は無料、事前に本を読んでおく必要はありませんので、お気軽にご参加ください。


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