根掛けから電線、データセンター、そして核融合へこんにちは。11月下旬にこんな記事を見かけました。https://www.bloomberg.com/AI人気で光差す139年の老舗電線企業、日本株上昇率1位はフジクラ(ブルームバーグ): 世界的な人工知能(AI)ブームが、創業139年の歴史を持つ老舗電線企業を日本株市場のスターの座に押し上げている。データセンター向け光ファイバーケーブルやスマートフォン向けフレキシブルプリント基板(FPC)、自動車用ワイヤハーネスなどを製造するフジクラの株価は今年に入り5倍以上上げ、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の年初来上昇率で断トツだ。25日にはグローバル投資家がベンチマークに使うMSCIオール・カントリー・ワールド指数(ACWI)に日本から唯一採用される。フジクラの取締役最高財務責任者(CFO)を務める飯島和人氏はブルームバーグのインタビューで、「2022年くらいからデータセンターの需要が大変高まってきた」と指摘し、特に今年に入りAIのためにデータを蓄積、管理する設備やシステムが山ほど必要だという「『GAFAM』の考えを肌で感じている」と語った。(省略)スマホ向けFPCを製造するフジクラは、米アップルに部品を供給するサプライヤーリストにも名を連ねる1社。また、細径化と高密度化に成功した独自の光ファイバー技術「SWR」にも強みを持っている。(省略)フジクラは1885年に藤倉善八氏が絹・綿巻線のメーカーとして創業。電線からワイヤハーネス、光ファイバーと供給製品を拡大し、新幹線の信号ケーブルなども作っている。新型コロナウイルスの流行や米中の貿易摩擦に直面した20年3月期には16年ぶりの最終赤字に陥ったが、AIブームの恩恵でここ数年の利益は拡大傾向だ。(省略)AIブームが業績を押し上げるフジクラが次に狙うマーケットは核融合だ。同社は昨年、米国で世界初の核融合炉の実証に取り組むコモンウェルス・フュージョン・システムズに対し、レアアース系高温超電導線材の納入を開始し、将来的な同製品の生産能力拡大を目指している。飯島CFOは「2030年以降の柱になってくれればと考えている」と話した。(引用ここまで)電線の前は何をしていたのかな?と興味をもって、フジクラ社の公式サイトに行きました。なんと、フジクラの創業者は、根掛けという、日本髪の髪飾りで、細い組紐に珊瑚などを数珠のように繋いだ、今で言えばブレスレットみたいな形状のものを作っていて、そこから電線をやろうと思いついたそうです。面白いですねーさらに創業者さんは商売上手だったようで、こんなエピソードもありました。https://www.fujikura.co.jp/history/1843/index.html「1884年(明治17)、善八は丸型の根掛けを創意工夫する。その新製品に「市川掛け」と命名し、当時の歌舞伎の名優9代目市川団十郎に依頼して口上とともに毎日数百本を客席にばら撒いた。それが評判となり、全国から注文が殺到する。そして、その利益が善八の電線事業の資金的背景となったのである」細くて長い線状のものをねじり合わせる、と髪飾りを作る仕事を抽象化し、世の中の動きを俯瞰して、電線、データセンター、そして核融合へ。素晴らしいと思います!2024.12.23 06:27
おすすめの学術系VTuber動画・その2 おまけこんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミから派生して、不定期で「おすすめの学術系VTuber動画」を投稿しています。今回は「おすすめの学術系VTuber動画・その2」で、倭人ってなんだろうと調べていて見つけた動画を紹介します。学術系VTuber自身による動画ではないので、おまけということで…日本人の顔のルーツに新説、金沢大の研究チームが発見 縄文人+弥生人+「古墳人」(動画01)https://www.youtube.com/watch?v=6XLvuXzkuWA&t=27sさて日本人について、中学の歴史の教科書(平成27年3月31日検定済、教育出版)は、・氷河時代に、大陸から、ナウマンゾウなどを追って、人々が日本列島へ移住してきたこと・紀元前7~6世紀ごろ、朝鮮半島などから、人々が新たな土地を求めて九州の北部に渡ってきたことを記しています。縄文時代が紀元前14000年頃から、弥生時代が紀元前10世紀頃から、古墳時代が3世紀中頃から、ということなので、前者が縄文人、後者が弥生人というイメージかと思います。「あの俳優は縄文顔寄りだ」とか、「私は弥生顔っぽいかな」とか、よく言いますよね。弥生ミュージアム 弥生人の身体的特徴https://www.yoshinogari.jp/ym/episode03/body_feat.html#:~:text=%E5%85%B8%E5%9E%8B%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%B8%84%E6%96%87%E4%BA%BA%E3%81%A8%E5%BC%A5%E7%94%9F弥生ミュージアムは、国営吉野ヶ里歴史公園が運営するサイトで、吉野ヶ里遺跡は佐賀県にある弥生時代の遺跡です。さらに動画01によると、なんと、古墳人もいるらしいです。金沢大学の覚張隆史助教によると、金沢市で見つかった古墳時代の人骨から、古墳時代の人たちのゲノム配列が、弥生時代の人と遺伝的に異なった特徴を持っていることがわかりました。しかも、古墳時代に東アジアからやってきた集団、つまり古墳人の子孫は、今の日本人の4割くらいもいるそうです。中国では、日本人のことを「倭人」と呼んでいたそうですが、倭人って調べてもよくわからないんですよね~「王が倭の軍と戦い、これを破った」ことが書かれている朝鮮半島の広開土王碑(好太王碑)は、古墳時代真っ只中の414年に建てられていますから、ひょっとしたら、古墳人=倭人なのかもしれません…自分のこと、日本人のことがわかっていくかと思うと、ワクワクしますね!もっと詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ。私たちは何者か~DNAで迫る現代日本人への道https://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2021/10/story/2021-10-story-story_211005/#:~:text=%E5%AF%BE%E8%B1%A1%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E9%81%BA%E8%B7%A1%E3%81%AF.古代ゲノム学が解明する日本人集団の三者起源https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abh24192024.11.14 10:15
おすすめの学術系VTuber動画・その2こんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミから派生して、不定期で「おすすめの学術系VTuber動画」を投稿しています。今回は、こちらです。【ゆっくり解説】古代朝鮮は日本が支配していたのか?古代史最大のタブー「任那」について解説・考察(動画01)https://www.youtube.com/watch?v=1lRBBi5i6poこの動画をおすすめしようと思った理由は、日本の前方後円墳(箸墓古墳、3世紀)のほうが、朝鮮半島南部の前方後円墳(5世紀~6世紀)より古いことを、朝鮮半島の南部を日本(倭)が勢力下に置いていた根拠として挙げていたからです。さて、任那(みまな)についてご存じない10代が多いと思うので、そこからお話ししていきます。先日、17歳の子ども(もう一人の代表理事である渡辺実結)の中学のときの歴史の教科書(平成27年3月31日検定済、教育出版)を読んでいたら、「4世紀ごろの朝鮮半島の南端には、伽耶(加羅)諸国が分立していました」と書かれていました。私は1969年生まれで、1980年前半に中学生でしたが、当時の教科書には、朝鮮半島の南部に任那日本府があったと書いてありました。だから、562年に任那日本府が滅亡するまで、200年くらいの間、朝鮮半島の南部を日本(倭)が支配していたらしいと、ずっと思っていました。しかし、今の教科書には「任那」の文字すらないことにビックリ!教科書には、「大和政権は、4世紀ごろ、鉄や進んだ技術を求めて朝鮮半島南端の伽耶諸国と関係を深め、百済とも同盟を結んで高句麗や新羅と戦いました。5世紀に入ると、大和政権の大王は、中国の南朝に何度も使いを送り、皇帝の権威を借りることで、倭(日本)の王としての地位を高め、朝鮮半島の国々との関係を有利なものにしようとしました」と書かれていますが、伽耶諸国を任那日本府に置き換えると、私が40年くらい前に教わった内容とだいたい同じです。それでは、なぜ任那日本府ではなく、伽耶諸国と記述されるようになったのでしょうか?加耶南部諸国と倭ㅣ田中俊明 敎授(滋賀県立大学)(動画02)https://www.youtube.com/watch?v=ZQ6UZMvIvZIを視聴しました。これによると、任那国は、加耶南部諸国の中のひとつの国で、倭は、任那国を含めた加耶の南部の諸国と4世紀に同盟関係に入ったのだそうです。そしてまた、広開土王碑(好太王碑)は、高句麗の長寿王が414年に建てた巨大な碑ですが、その碑文では、倭は高句麗自身と対峙する大きな勢力とされています(「王が倭の軍と戦い、これを破った」ことが書かれていると、教科書でも言及されています)。ということは、今のスタンダードな考え方は、・任那に日本の出先機関があったとか、任那が日本の領土だった、というわけではない・しかし倭(日本)は、任那国を含めた加耶の南部の諸国と深い関係にあり、朝鮮半島の南部で(高句麗王が父王の業績として勝利を述べたくなる程度の)大きな勢力をもっていたといったところみたいです。ただ、ここで疑問が生まれます。日本列島にある倭が、伽耶の南部の諸国と深い関係にあったとしても、高句麗から敵視され、対等に戦うほどの勢力でありえたのでしょうか?のちの豊臣秀吉による朝鮮出兵を考えても、日本列島から船を出して朝鮮半島に渡り、戦うのは大変なことです。伽耶の諸国から食料などの補給を受けられたとしても、大勢の人間が移動するとなると、ねえ…朝鮮半島南部にすでに拠点があった、と考えるほうが自然な気はします。あるいは、当時は中国~朝鮮半島~日本列島の人や物の行き来が盛んだったので、朝鮮半島に、日本列島にもいる○○人の拠点があった、と考えられるかもしれません。それが「倭人」だったりするのでしょうか?では、倭人とはなんでしょうか?教科書は含みのある表現をしています。「中国では、日本のことを「倭」、日本人のことを「倭人」とよんでいました」しかし中国が、例えば、魏呉蜀の三国で覇権を争っていた頃の中国が(有名な「魏志倭人伝」を念頭に置いています)、朝鮮半島や日本列島を厳密に区別できていたでしょうか? 日本列島の現状を正確に把握できていたでしょうか?三国志好きの方は、「無理、無理」と言うと思います!時代は遡りますが、漫画『キングダム』の主人公の1人、秦の始皇帝が晩年に不老不死を求めていたため、方士の徐福が「東方の三神山に長生不老の霊薬がある」と言って東方に船出したものの、秦には戻らなかったそうです。徐福が日本に定住したという伝承はありますが、「三神山」が中国大陸、朝鮮半島、日本列島…どこにあるのか、いまだにわかっていません。一方、『東方見聞録』は、マルコ・ポーロが13世紀後半にアジア諸国で見聞した内容をもとにした旅行記ですが、彼が中国で聞いた「黄金の国ジパング」の話は、当時の中国人が東方に抱いていた素晴らしい幻想だったと思われます(現代日本人にとっては荒唐無稽ですらあります)。つまり、中国の人々にとっては東方の現実なんて、正直に言えばどうでもよくて、「倭」は東にあるどこか、程度だったのではないか、それは朝鮮半島だったかもしれないし、日本列島だったかもしれないし、その両方だったかもしれない、と考えられないでしょうか?よくわからなくなったので、逆から考えます。現代の考え方では、国家は以下の3つの要素から成るとされています。・主権(政府)・領土・国民(永続的住民)3世紀、4世紀くらいの日本列島や朝鮮半島の国々には、おそらくその意味での政府はなかったし、領土もなかったし、国民もいなかっただろう、と思います。小さな国がたくさんあって絶えず争っていて、国と言っても組織化された機能的な政府はなく、国境も不明確で、住民は戦争が起きたり飢饉が起こったりするとほかの国へ逃げ出してしまう、というような状態だったのではないでしょうか?と考えると、任那に、現代人がイメージするような、日本人が住み、日本の政府機関のある、日本の領土(誤解を恐れずに言えば、植民地)があったはずがありません。ただ、任那などの朝鮮半島南部に、現代日本人とつながる人々は住んでいただろうし、日本列島の国から派遣された役人がいたかもしれないし、そうした人々が多く住む地域があったのかもしれません。当時の日本列島や朝鮮半島は、今よりももっと曖昧で複雑だったのではないでしょうか?という次第で、任那日本府という言葉が教科書から消えたのは、至極もっともなことだと納得しました。ただ気になるのは、動画01で、日本の前方後円墳(箸墓古墳、3世紀)のほうが、朝鮮半島南部の前方後円墳(5世紀~6世紀)より古いことを、朝鮮半島の南部を日本(倭)が勢力下に置いていた根拠として挙げていたことです。ここまでわかってきた!前方後円墳の謎!!【ゆっくり解説 】(動画03)https://www.youtube.com/watch?v=7dGUqVl7c_Qによると、前方後円墳自体は日本独自の形で、古代中国にはこのような形の墳墓は存在しないようです。漢字、呉服(和服、着物)など、いろいろと中国の真似をしてきた日本に独自のものがあったとは、驚きます(写真なんてない時代ですから、持ち運びのできないものは真似しようにもできなかったのでしょうが…)。しかも、近年、ミラノ工科大学などの研究グループが Google Map で日本全国158基の向きを調べたところ、多くの前方後円墳の方形の側が、一年を通して太陽と満月に向くように配置されていたそうです。つまり、偶然とか、なんとなくで造られたものではなく、明確な意図をもって造られた墳墓であり、それだけの墳墓を造れるだけの勢力が、当時の日本列島には存在した、と言えましょう。そして、箸墓古墳 卑弥呼の墓? 古代史最大のミステリー、邪馬台国候補地の前方後円墳を検証する(動画04)https://www.youtube.com/watch?v=8mmeWfbcPtAによると、箸墓古墳は3世紀中頃に築造された、最古の前方後円墳であると考えられているそうです。だとすると、より古い前方後円墳のある日本列島の人々が、より新しい前方後円墳のある朝鮮半島南部に進出した、と考えるのが自然ですよね。朝鮮半島最大の古代の墓を発掘後に埋めた理由...【ゆっくり解説 】(動画05)https://www.youtube.com/watch?v=_P_nYTycrHAには、朝鮮半島南部の前方後円墳をはじめとするさまざまな墳墓について詳しく語られています。ざっくりまとめると、今は、日本列島の前方後円墳を模倣した前方後円墳が朝鮮半島南部にあること(日本列島のなんらかの影響が朝鮮半島南部に及んでいたこと)は認められており、誰が、どういう背景で埋葬されたかが議論されている段階のようです。30年後、40年後くらいにはもっとわかってくるかもしれませんね~ただ、ひとつ問題があります。【驚愕!!】 ここまで判明した箸墓古墳!卑弥呼が眠っている!?(動画06)https://www.youtube.com/watch?v=lhLMkU5NH-Iによると、宮内庁は箸墓古墳を第7代孝霊天皇皇女の倭迹迹日百襲姫命(やまとととひももそひめのみこと)のお墓としており、宮内庁は天皇家のお墓を発掘することを許可しません。元となる日本列島の前方後円墳を調べられなければ、朝鮮半島の前方後円墳についてもわからないのですがね…とは言え、希望のタネもありまして、物質を透過する「ミューオン」という素粒子を利用し、内部の構造を解明するための科学調査が行われているそうです。この調査で、もしかしたら埋葬室のような空間の存在が確認できるかもしれません。最後に「ミューオン」について、サラっと見ておきましょう。世界三大墳墓について、聞いたことはありますか?・世界最大の前方後円墳である大仙陵古墳(伝仁徳天皇陵)・秦の始皇帝陵・世界最大のピラミッドであるクフ王のピラミッドです。そのクフ王のピラミッドでは、2017年に、日本・フランス・エジプトの共同研究チームによるスキャンピラミッド計画が行われ、大回廊の真上、地上から60から70mほどの位置に巨大な空間があると発表されました。森島邦博 特任助教が率いる名古屋大学の研究チームが、ミューオンを利用して、まるでレントゲン写真を撮るように、ピラミッドを傷つけることなく、その内部構造を可視化することに成功したのです。ピラミッドの巨大新空間を科学的に発見https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v15/n3/%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%81%AE%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E6%96%B0%E7%A9%BA%E9%96%93%E3%82%92%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%81%AB%E7%99%BA%E8%A6%8B/91244#:~:text=%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%9C%80%E5%A4%A7%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E3%82%AF%E3%83%95%E7%8E%8Bピラミッドに未知の空間! 古代エジプト“新発見”に研究者の対談で迫るhttps://www3.nhk.or.jp/news/special/sci_cul/2023/04/story/story_egypt/#:~:text=%E7%99%BA%E8%A6%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E2%80%9C%E6%9C%AA%E7%9F%A5%E3%81%AE%E7%A9%BAクフ王のピラミッド内に巨大空間を発見!https://www.jst.go.jp/seika/bt2018-03.html#:~:text=%E3%83%93%E3%83%AB%E3%81%AE%E5%86%85%E9%83%A8%E3%82%84%E5%8F%A4%E4%BB%A3%E9%81%BA%E8%B7%A1すぐ上のJST(科学技術振興機構)のページによると、ミューオンは、火山観測や地下空洞などの社会インフラの点検技術としても期待されているそうです。「ピラミッドなどの遺跡調査は、この技術の応用例の1つにすぎない。例えば、東日本大震災で事故を起こした原子炉内部を観測、炉心溶融が起きていたことを確認した。道路の陥没事故を未然に防ぐための空洞調査や、火山のマグマの様子をとらえて噴火の予測に役立てようとする実験も進行中だ。将来的には、富士山の調査でも検討しているという。もともとは素粒子の観測のための基礎研究が、思いもよらぬ形で私たちの生活に役立ちそうだ」2024.11.04 04:04
おすすめの学術系VTuber動画・その1こんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミから派生して、これから不定期で「おすすめの学術系VTuber動画」を投稿していこうと思います。その理由をまさに言ってくれている学術系VTuber動画を見つけたので、まずはこちらから。【情報の非対称性】※全員○○です※ 学術系VTuberは信頼できるのか?【夜須田舞流の世界一役に立たない授業】・シグナリングもスクリーニングも成り立っていないYouTube上で学術系Vtuberの動画が信頼できるという理由は、経済学的に言えばない・これは匿名で活動している学術系Vtuberという構造上の問題なので、なかなか難しいだから、学術系VTuber動画を入口として、本や論文を読むべきだ、というお話でした。2024.10.06 10:11
ホームページリニューアル完了と代表理事2人体制のご報告こんにちは。THINKERSのホームページ(www.thinkers.jp) のリニューアルが完了しました。THINKERSの雰囲気が伝わることだけを目指し、情報は今ご覧のウェブサイトに集約しています。あわせて、一般社団法人THINKERS NEO が代表理事2人体制になったことを報告します。2023年12月、渡辺実結(わたなべみゆい、2007年生まれ)が代表理事に就任しました。ご報告が遅れたのは、アイコンがなかなか決まらなかったからです。THINKERS のイメージで、あれこれ悩んで作成していました…2024.09.03 05:47
学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第4回の報告こんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)第4回(2024年6月17日@Google Meet)の報告をします。メンターは、産業エコ系VTuber KIWAMU(きわむ)さんです。第4回のテーマは、次世代のエネルギー。工学研究科 博士課程後期修了のメンターが、わかりやすいスライドで説明します。最初に、これまでの3回のおさらいをしました。詳細は、学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2第1回の報告と予告学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第2回の報告と予告学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第3回の報告と予告をご覧ください。そして、第2回で質問のあった水素エネルギーについて詳しく見ていきました。まず、水素エネルギーの特徴ですが、燃焼時にCO2(二酸化炭素)を排出しません。中学2年生の理科で学ぶ化学反応式で表すと、2H2+O2→2H2Oとなります。水素と酸素が結合すると水になり、CO2はできないのです。2つ目の特徴として、エネルギー効率が高いです。この点についてはあとで触れます。3つ目は、様々な物質(水、天然ガスなど)の分解で得られること。中学2年生の理科の実験で、水の電気分解をやると思いますが、さきほどの化学反応式の逆で、水に電流を流すと、水素と酸素ができます。日本は水が潤沢にある国ですので、国内で得られるクリーンなエネルギーとして注目されています。参加者から、「水素自動車も注目されていますね。トヨタのMIRAIなども水素エネルギーですね」とコメントが入りました。ただ、水素エネルギーにはいろいろな種類があります。 グレー水素は、化石燃料を水蒸気と反応させて得る水素です。主に天然ガスの分解で得られる水素を指しますが、天然ガスを分解するときにCO2が発生するので、クリーンなエネルギーとは言いにくいです。ブルー水素は、グレー水素の製造過程で生じたCO2をCCS(Carbon dioxide Capture and Storage、二酸化炭素回収・貯留)で回収し、排ガスの中のCO2を封じ込めたものです。この場合は、温室効果ガス(GHG)を排出していないと言えます。グリーン水素は、再生可能エネルギーを用いて製造した水素です。例えば、太陽光発電で得られた電気で水を分解した場合は、グリーン水素ということになります。これら3つのうち、ブルー水素、グリーン水素がクリーンなエネルギーとされています。水素エネルギーの課題を見ておきましょう。まず、グレー水素は、製造のために化石燃料を使い、CO2が発生することが課題そのものです。次はブルー水素、グリーン水素にも共通する課題ですが、水素は原子半径が小さく、反応性も高いため、専用の容器を必要とする点が挙げられます。第1回で天然ガスは液化してタンカーで運ぶという話をしましたが、あのタンクは鉄製です。もしそこに水素を貯めた場合、サイズの小さい水素が鉄の間に潜り込んで、金属を脆くさせて、発生した亀裂から外に抜けてしまうことがあります。このように、タンクの材質に配慮が必要であるため、初期投資やメンテナンスのコストがかかってしまいます。さらに、さきほど見たように、水素はエネルギー効率が高いため、事故が発生した場合の被害が大きくなると言われています。H形ガラス管などを使って水の電気分解の実験をしたとき、何ができたか確認するために火のついたマッチを近付けると思いますが、そのとき水素がポンと音を立てて燃えます。学校で安全に行われる実験でもそうなのですから、ギュウギュウに圧縮した水素に火を近付けたらもちろん、火でなくても静電気や、金属同士がこすれ合ったときの火花程度でも爆発してしまう危険があります。つまり、エネルギー効率が高いがゆえに被害が大きくなってしまうことが、水素エネルギー3つ目の課題です。 そのため、水素を安全に運ぶための工夫が必要となり、例えばアンモニアがキャリア(貯蔵材料)として注目されています。水素貯蔵材料の重量密度と体積密度の関係についてのグラフを見ると、アンモニアは重量密度、体積密度ともに大きくなっています。アンモニアは、メンターの専門である窒素と、水素で作られます。化学反応式で表すと、N2 + 3H2 → 2NH31mol、22.4Lのアンモニアを運んだら、33.6L、つまり1.5倍の水素が取り出せます。アンモニアの中にギュッと水素が詰まっているわけです。このように、アンモニアの状態で運んだほうがたくさんの水素を運べるだけでなく、アンモニアは-33度で液化する点で扱いやすいですし、インドネシアやマレーシアから輸入していますので、そのタンカーを使いまわすことができます。アンモニアをグリーン水素で作って、エネルギー消費の少ない方法で水素に戻すことができれば、水素エネルギーの課題は解決すると考えています。また、アンモニアは、水素の輸送手段としてだけでなく、発電の燃料としても注目されています。アンモニアは混焼と言って、化石燃料と混ぜて燃焼させることができます。第1回で見たように、日本は石炭火力発電の割合が比較的多いので、グリーン水素から生成したアンモニアを石炭と混焼してみたところ、アンモニアの比率が20%でも、CO2の排出量が3割くらい減りました。アンモニア50%だとさらに減って、天然ガスを使った火力発電におけるCO2の排出量に近くなりました。 ただ、アンモニア発電にも課題はあります。第1回、第2回で見たように、世界全体として石炭火力発電への風当たりが強くなってきていて、COP(コップ、国連気候変動枠組条約締約国会議)では、将来的に石炭火力発電をなくす方向で議論が進んでいます。とはいえ、発展途上国では、発電の50%くらいが石炭火力発電で、中国やインドはさらに石炭の割合が多いです。そのため、石炭を使っている国の初期の選択としては、たしかにアンモニア発電は有効ですが、最終的に石炭火力発電を廃止するという流れの中で、アンモニア混焼によるCO2排出減がどれほど説得力をもつでしょうか?また、アンモニア混焼によってCO2が減ったとしても、NOx(ノックス、窒素酸化物)が排出されます。NOxの中には温室効果ガス(GHG)も含まれているので、NOx対策が別途必要となります。さらに、グリーン水素から生成したアンモニア20%を石炭と混焼した場合ですら、コストが石炭火力発電の4倍となり、それが国民の電気代に響いていくことになります。コストをどう抑えるのでしょうか?これらの課題を踏まえ、アンモニア発電の今後の展開として、 ・アジアを中心とした石炭火力発電がメインの国への支援をしつつ、・CO2ならびにNOxの排出のさらなる削減を図り、 ・何年までにこれだけ削減できると具体的な数値で、脱炭素に対する貢献の根拠を明示していくのがよいのではないかと考えています。 全4回をまとめます。・人類の使用するエネルギーの増加にしたがって、地球環境への影響も増加した・その中で、環境に配慮した技術が日進月歩、開発されてきている・環境問題は地球全体の問題であり、日本の中だけで収まる問題ではない。日本は世界に対してこのように貢献できるから、この方針で進みます、といった態度を決めて、粘り強く各国と対話をしていく、そうした国際的な交渉力も必要不可欠である参加者から「勉強になりました」「面白い授業でした」といった声が上がりました。最後は、恒例の質問タイムです。参加者「アンモニアの他に、例えばどのような水素キャリアがありますか?」メンター「金属に水素をつけるタイプとして、AlH3(水素化アルミニウム)、有機物につけるタイプとして、C7H14(メチルシクロヘキサン)などがあります」参加者「水素を燃やすと水ができますが、この水をまた何かに利用したりは出来ないのでしょうか?」メンター「水素を燃焼させてエネルギーと水が出てきた場合、出てくる水の量は少量です。それを集めるのにもエネルギーが必要になるので、利用することは今はあまり考えられていないと思います。40年後、50年後には新しいエネルギーが出てきているでしょうから、その頃には利用できるようになっているかもしれません」参加者「何年か前から、メタンハイドレートなど、日本近海にエネルギー源が埋まっているといったニュースを見かけます。今有望なものはありますか?」別の参加者「島根ら辺でしたっけ?」メンター「2年前から島根・山口両県沖で海洋ガス田の探鉱が始まっています。国内での海洋ガス田の新規探鉱・開発は約30年ぶりだそうです。東部南海トラフ(静岡県沖~和歌山県沖)のメタンハイドレート濃集帯のメタン量は、天然ガス田で言えば大ガス田クラスの量とも言われていますが、実用化にはまだまだ時間がかかりそうです。ただ、今世紀に入ってからの技術開発により、アメリカではシェールガス(シェール層から採れる天然ガス)の国内生産が本格化し、天然ガスの輸入量が減少しました。これはシェール革命と呼ばれています。日本でも、うまくいけば有力なエネルギー源が見つかるかもしれません。参加者の中から、掘り当てる方が出ることを祈りつつ、お開きにしたいと思います」学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン3の内容が決まりましたら、このウェブサイトでお知らせします。2024.06.27 08:20
学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第3回の報告と予告こんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)第3回(2024年6月10日@Google Meet)の報告をします。メンターは、産業エコ系VTuber KIWAMU(きわむ)さんです。第3回のテーマは、エネルギーと環境問題。工学研究科 博士課程後期修了のメンターが、わかりやすいスライドで説明します。最初に、2022年の日本のエネルギー消費量は、高度成長期真っ只中の1965年と比較して3倍に増加していて、一人当たりのエネルギー消費量は2.3倍に増加していることを確認しました。生活水準が上がるとともに、インフラで使われる電力量が増えたため、技術の進歩や省エネルギーをもってしても、これだけの増加を止めることはできなかったのです。単に人々の需要が増えているだけでなく、人が生きるために必要なエネルギー消費量が増えている、ということを理解しておきたいと思います。ちなみに、世界のエネルギー消費量は1965年と比較して4倍に増加し、一人当たりのエネルギー消費量は1.6倍に増加しています。1.6倍と聞くと日本の2.3倍より少ないようですが、先進国だけでなく発展途上国も多数ある中で世界全体で見ると、このような数字になります。最新のデータでは、80%くらいが石油、天然ガス、石炭などの化石燃料を使った発電になっています。それだけ温室効果ガス(GHG)を排出する化石燃料に頼っている、ということです。次に、公害と環境問題、それぞれの定義を確認してみましょう。公害とは、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境に係る被害が生ずること(環境基本法より)。環境問題とは、広くは生物を取り巻いている外界に発生する、生物にとって有害な現象一般。人類の活動が人類を取り巻く環境あるいは自然総体に対して各種の干渉を行い、悪影響を生じさせる現象(日本大百科全書より)。とてもよく似ていますが、違いをイメージとして述べると、公害は、日本ならば日本の中の近隣地域など、特定の人や地域に及ぶものであるのに対して、環境問題は国全体、さらには他国にも影響がある点で、国際的な問題となりやすい点かと思います。まず、日本の公害・環境関連の歴史を駆け足で見ておきましょう、1891年に、衆議院議員の田中正造が、足尾銅山鉱毒問題について議会で取り上げました。この問題は、日本の公害問題の原点と言われています。1950年代、60年代には、のちに日本の四大公害と呼ばれる水俣病、新潟水俣病、イタイイタイ病、四日市ぜんそくが深刻な被害を引き起こしました。それをうけて、1967年に公害対策基本法が制定され、さらに1993年には環境基本法へと発展しました。この辺りは、中学の歴史で学ぶところだと思います。ここでは、四日市ぜんそくについて少し説明しておきます。1950年代末から1970年代にかけて問題化した大気汚染による集団喘息障害であり、原因物質は、硫黄酸化物、二酸化窒素、二酸化炭素でした。 中東産の硫黄分の多い原油を使っていたことで被害が悪化したとされています。 中部電力の火力発電所も発生源の一つでした。なぜ四日市ぜんそくを取り上げたかと言うと、他の3つの公害は、一企業が排出した金属が原因物質となっているのに対して、多数の企業が集まったコンビナートにおいて、化石燃料を燃やしてできた物質が原因物質となっているからです。まさに、最初に見た高度成長期のエネルギー大量消費によって生じた問題について対策を怠った結果として生じた公害であり、それゆえに、環境庁(現・環境省)設立の要因となった公害でもありました。ここで、主な環境問題とエネルギーとの関連について、簡単に整理しておきましょう。① 地球温暖化←化石燃料の燃焼による温室効果ガス(GHG)排出② 森林破壊←太陽光発電のソーラーパネルや水力発電所など、発電施設の設置③ 海洋汚染←石油を運ぶタンカーの座礁など、輸送時の事故④ 水質汚染←地球温暖化によって水温が上昇し、生態系が変わる(赤潮など) ⑤ 大気汚染←化石燃料の燃焼によって硫黄酸化物、窒素酸化物が排出される(四日市ぜんそくなど)このように問題状況はさまざまですが、エネルギーと環境問題は切っても切れない関係にあり、環境問題への影響をいかに少なくしていくかが大切です。それでは、エネルギーの観点から、どのように環境問題への影響を少なくしていくことができるでしょうか?①④⑤ 化石燃料の燃焼に関して・脱硫、脱硝、脱炭素設備の改善これは、第1回で触れたように、日本の火力発電所の強みでもあります。・温室効果ガス(GHG)排出量の少ない燃料の利用(バイオマス・水素含む)・化石燃料を使わない発電への代替 ② 発電施設の設置に関して・土地改変量の少ない発電方法の利用前回太陽光発電のところでお話しした「ペロブスカイト系太陽電池」や、ビル・家の屋上にソーラーパネルを設置することは、新たに山や森を切り拓かなくてよい工夫と言えます。③ 輸送時の事故 ・安全な輸送方法(液化、吸蔵、航路の確保など) もちろん、省エネルギーの実施も重要な対策です。最後にエネルギーから枠を広げて、環境と持続可能性に関連して Planetary Boundaries(プラネタリーバウンダリー)についてお話ししておきます。 これは、中学の公民の教科書にも載っている SDGs(エス・ディー・ジーズ、Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)とも深い関係がある概念で、地球の環境に変化(とくに人間の影響)が加わっても、もとの状態に戻り、地球環境が安定した状態を保てる限界の範囲を9つの項目で示したものです。例えば気候変動(地球温暖化)について言えば、もともと二酸化炭素を出す生物はいたわけで、二酸化炭素が吐き出されたとしても地球がもつ自浄能力でバランスが保てていたのが、人間の活動が増えたために一気に二酸化炭素が増えて、地球の自浄能力が追いつかなくなっているのが、今の状況なのです。一方で、成層圏オゾン層の破壊についてはさまざまな対策が採られた結果、回復に至っています。それでは、エネルギー無しで生きていけない私たち人間は、環境と折り合いをつけていくために、これからどうしたらいいのでしょうか?現状維持で、好きなだけエネルギーを使うならば、まもなく資源は枯渇し、環境は汚れ、未来の人々の生活充実度は下がるでしょう。これに対して、ディープエコロジーという考え方は、今の人々が生活の質を落とすべきだとします。しかしそれでも、未来の人々の生活充実度が下がることを防げません。そこで、メンターが専門とする産業エコロジーは、産業を持続可能にすることで、今の人々のニーズをできるだけ満たしつつ、未来の人々の生活充実度も損なわないようにすることを目指しているのです。以上、まとめます。 ・人類の使用するエネルギーの増加にしたがって、地球環境への影響も増加してきた ・環境へのダメージは人間へのダメージとして顕在化した・様々な持続可能性を考えた行動・施策が必要それでは質問タイムです。参加者「最後、持続可能な行動、施策が必要と書いてありますが、私たちが思っているより、環境へのダメージは大きいものですか?」メンター「大きいと思いますが、見えにくいダメージもあるかもしれません。例えばプラネタリーバウンダリーの項目のうち、生物圏の健全さについては、種の絶滅速度が限界を超えています。また、土地利用変化に関しては、森林を切り拓いて農地などにしたため、生態系が失われ、回復できていません。新規化学物質については不明な点が多かったのですが、最近では、マイクロプラスチックなど、環境へ悪影響を与えることが広く認識され始めています」参加者「プラネタリーバウンダリー、非常に面白いです。今地球に与えているダメージが、地球が自分で処理できる範囲を超えているという図だと思います。そこで疑問を抱いたのですが、クリーンエネルギーをプラスすると、さらなる悪化を促してしまうのではないでしょうか?」メンター「鋭い指摘です。地球温暖化対策のために、森林を切り拓いて太陽光発電のメガソーラーを建設することで土地利用変化の項目が悪化するように、さまざまな項目全てを同時に改善することは難しいです。優先順位というか、許容ラインを見定める必要があると考えています。最近の研究では、二酸化炭素が減っても、同時に地球を冷ます効果のあるガスも減って、計算をしてみると、実は温暖化対策になっていないのではないか、いわば、あちら立てればこちらが立たぬ、といった状況になっているとされています。生物地球化学的循環の項目について言えば、私の専門である窒素の主要な用途は、食料生産のための人工肥料ですが、これが大気や水質、土壌に深刻な汚染をもたらしています。現状ハーバー・ボッシュ法という方法で肥料は作られていますが、これに世界のエネルギー消費量の3%くらいのエネルギーを使っています。これから世界の人口が増えていく中で、それではまずいので、今急ビッチで、ハーバー・ボッシュ法を使わずに肥料を作る研究が行われています」ちなみに、ハーバー・ボッシュ法は、高校化学の教科書で大きく取り上げられています。参加者「これからEV車は普及すると思いますか?」メンター「ヨーロッパでは普及すると思いますが、日本では厳しいかなと思っています。化石燃料を使わないというメリットはあるのですが、短距離、平坦な道、温暖な気候、という条件に向いていて、日本のように、山がち、長距離利用が多い、冬は寒くなって雪の降る気候、さらに充電スタンドの設置が進まない、という条件では難しいと思います。地政学的条件による、というところです。ただ、ルートが決まっているトラックなどに対して普及する可能性はあると思います」第4回(6月17日20:00-21:00)のテーマは、次世代のエネルギーです。申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。参加費は無料、前提知識は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。2024.06.16 09:57
学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2第2回の報告と予告こんにちは。学術系VTuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)第2回(2024年6月3日@Google Meet)の報告をします。メンターは、産業エコ系VTuber KIWAMU(きわむ)さんです。第2回のテーマは、再生可能エネルギーを使った発電。工学研究科 博士課程後期修了のメンターが、わかりやすいスライドで説明します。前回、エネルギーや、仕事の原理といった、中学の理科の教科書に出てくる言葉の定義をきちんと確認するところから始めたので、今回も、まずは定義の確認から始めましょう。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力その他非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの(エネルギー供給構造高度化法より)。ムム、「再エネ」などと省略して軽い気分で使っていましたが、厳密に定義するとちょっと難しそうですね。でも、ポイントを押さえれば大丈夫。前回フォーカスした火力発電は化石燃料を使った発電でしたが、化石燃料は大昔からの堆積物なので、いつかは枯渇してしまうと言われています。そうではなくて、エネルギー源として永続的に利用することができることが、再生可能エネルギーのポイントです。代表的なものを見ていきましょう。まず、水力発電。河川にダムを設置するなどして水の位置エネルギーを貯え、それを用いて水車を回転させることで発電する方式です。前回見たように、日本は戦後まもなくまでは水力発電の割合が多い、水主火従という発電構成でした。現在でも、カナダや南米、北欧に多い発電方式です。前回あれこれ例を考えたエネルギーの変換で言うと、位置エネルギーから電気エネルギーへの変換となります。そのため、水資源はもちろん、山など水を蓄えられる場所があることが必要になり、これが可能かどうかは土地柄次第です。前回、化石燃料を使った発電は、燃料を燃やす際に排ガスとして、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)を排出するので、環境への影響が問題となっているという話をしましたが、水力発電では何かを燃やすわけではないので、発電自体では二酸化炭素を排出しません。エネルギー源として永続的に利用できるか、という点で言うと、まず長いスパンで考えた場合、水を貯めて、山から流して、電力を得て、水は最終的に海に合流したり地下に潜ったりして、その後蒸発して、空気中に水分が溜まり、山に雨が降り、山から水が下りてきて…と永続的に利用することができます。短期的にも、夜間、電力の需要が少ないときに余った電力で、揚水といって、水を山に汲み上げておくことで、永続的な利用可能性を高めています。風力発電は、風を受けて風車などが回転し、そのエネルギーを発電機に伝えることで電力を生み出す方式です。運動エネルギーを電気エネルギーに変換するものであり、風は地球の自転などから生まれるものなので、地球がある限り、エネルギー源として永続的に利用できます。場所は、山などの地上のほか、洋上もあります。洋上風力発電についても、設備を海に浮かべるものだけでなく、海底に土台を建てるタイプもあります。デメリットとしては、風のあるなしで発電量が変わる、設備が金属でできているので、潮の影響で錆びるのが早い、火力や水力に比べて、風車自体の寿命が短い、といった点が挙げられます。太陽光発電は、太陽の光エネルギーを直接電気に変える方式です。シリコンや化合物などの半導体でつくられており、ソーラーパネルに光が当たると、半導体の中で電子が動き、電流が生じ、日射強度に比例して発電します。水力、風力に比べて、設置できる場所が多いのがメリットです。いわゆるメガソーラーだけでなく、建物の屋上に置くことも一般的になってきました。次世代エネルギーと言われる「ペロブスカイト系太陽電池」は、街中にあるビルの窓全部で太陽光発電を行うことができる可能性がある、と言われています。メンターは、いつかノーベル賞を獲ってほしい、と力説していました。その他の再生可能エネルギーについても、簡単に触れておきましょう。地熱発電は、地下のマグマなどによって熱せられた高温の水や水蒸気の力を用いて行う方式です。火力発電同様、熱エネルギーを最終的に電気エネルギーに変換するもので、火山国である日本の特色を生かした発電方式と言えます。太陽熱発電は、太陽光のエネルギーを、熱として取り出してタービンを回転させる方式です。中国やアフリカの砂漠のように、遮蔽物がないところで行われている例があります。バイオマス発電は、動植物などの生物からつくり出されるエネルギー資源のうち、石油などの化石燃料を除いたもののことで、それを燃焼またはガスにしたときの熱エネルギーを用いる方式です。動植物などの堆積物である化石燃料を燃やすと二酸化炭素が排出されますが、バイオマス発電でも二酸化炭素は排出されます。ただ、例えば植物が育つ過程では、光合成によって二酸化炭素を吸収します。二酸化炭素を吸収したものを燃やして発電した結果、二酸化炭素が排出されても、プラスマイナスゼロ、という考えから、化石燃料と区別されています。速く育つ植物や動物を用いれば、枯渇する心配もなく、エネルギー源として永続的に利用することができます。日本でも、いろいろな火力発電所が研究をしているところです。再生可能エネルギーを使った発電のメリット、デメリットをまとめておきましょう。まず、メリットです。・純国産のエネルギーであり、エネルギー自給率の改善につながることなぜエネルギー自給率が重要かと言うと、他国からエネルギー源を輸入していると、その国と仲が悪くなったり、輸入先の情勢が不安定になったりしたときに、輸入が途絶えてしまうリスクがあるからです。・二酸化炭素をほとんど排出しないこと日本を含む120以上の国と地域が、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること(カーボンニュートラル)を表明しています。・水力発電については、余剰な電力を揚水にまわすことで、電気の無駄が出ないように使えること・枯渇のリスクがないこと次はデメリットです。・コストが高いことこれは、火力発電のコストが安過ぎるとも言えます。・導入に時間がかかること・土地利用や生態系等の環境への影響リスクが存在すること二酸化炭素が出ないから再生可能エネルギー万歳、ということではありません。この点は次回、詳しく見ていきます。・電力供給が安定しないこの点は、再生可能エネルギーの発電が十分なときに火力発電の稼働を減らして、不十分なときに火力発電の稼働を増やす、という調節が考えられています。ここで、原子力発電についても見ておきます。原子力発電は、ウラン燃料の核分裂の際に生じる熱を使って水を水蒸気にし、その力でタービンを回して発電する方式で、いうなれば化学エネルギーを電気エネルギーに変えるものです。火力発電のように、化石燃料を燃やすわけでないので、二酸化炭素は出ません。ただ、自然に存在しない反応を用いるため、再生可能エネルギーではありません。ちょっと不思議な立ち位置とも言えます。ウラン235の原子核に中性子が当たると、陽子と中性子を結び付ける力が不安定になり、膨大な熱エネルギーとともに核分裂が起きて中性子が出てきます。中性子1個をぶつけると中性子が増えて、その中性子がさらにウラン235にぶつかると、核分裂が起きてエネルギーと中性子が出てきます。最初の中性子を投げ込むと、ウラン235が存在する限り、自動的に反応が進んでいくので、エネルギー効率が大変良いです。もしこれが安全に使えるのであれば、非常に有効です。メリットとしては、以下が挙げられます。・資源の安定供給が可能なことウランは、石油のように中東に産地が固まっているわけではなく、世界のいろいろな場所で採れます。・二酸化炭素をほとんど排出しないこと・得られる熱エネルギーが莫大なので、結果として電気代が安価になることデメリットもあります。・事故が起こった際の被害が大きいこと水力発電でダムが決壊した場合などを考えると、原子力発電だけの問題とは言えないと思いますが、チェルノブイリ原発事故、スリーマイル島原子力発電所事故、福島第一原発事故を見てもわかるように、後世まで影響が残る点は無視できません。ただ、福島第一原発事故の後でも原子力発電所が稼働できているのは、関係各社が防護策を十分に採っていること、原子力規制委員会が厳しめに審査していること、があるのだろうと考えています。・使用済み核燃料の処理が問題となること・初期投資にお金がかかることこのように、原子力発電は難しい問題なので、しっかり議論をして、それぞれの立場で正しく決断を下すことが必要だと考えます。最後に、世界各国の電源構成を見てみましょう。さきほど言及したように、カナダやブラジルは水が豊富なので、水力が多いです。フランスは、70%が原子力なのが特徴的です。地震や津波、火山、地盤などの点で災害リスクが低いからだと考えられます。前回見たように、日本は、石炭・石油・天然ガス(LNG)など化石燃料への依存度が84%です。世界全体で見ると、石炭を含む化石燃料の割合は60%程度です。先進国は、原子力、風力、太陽光の割合が大きく、石炭が少ない傾向にあります。発展途上国は50%くらいが石炭で、中国やインドはさらに石炭が多いです。前回見たように、石炭火力発電への風当たりが強くなってきていて、COP(コップ、国連気候変動枠組条約締約国会議)では、将来的に石炭火力発電をなくす方向で議論が進んでいます。そうした場では、なにかと日本が非難されることが多いように感じるのですが、こうして世界各国の電源構成を見ると、日本が石炭火力発電を止めたとしても、果たして他の国もすんなりと止めるだろうか…と考え込んでしまいます。国ごとの特色、状況や、他国との関係も電源構成に影響しますし、地政学的なリスクも考えないといけません。以上、まとめます。再生可能エネルギーは、エネルギー源として永続的に利用できますが、それぞれメリット、デメリットがあり、さらに、地政学的な観点から適切な電源構成を考える必要があるので、例えば、火力発電を再生可能エネルギーに完全に置き換える、ということは難しいのではないかと考えています。質問タイムには、「水素は再生エネの一つとして、先生は扱いますか?」という最新の話題が出ましたが、メンター曰く「ものによる」そうです。水素については、第4回で詳しく取り上げる予定です。第3回(6月10日20:00-21:00)のテーマは、エネルギーと環境問題です。申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。参加費は無料、前提知識は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。2024.06.09 06:40
学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2第1回の報告と予告こんにちは。学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)第1回(2024年5月27日@Google Meet)の報告をします。メンターは、産業エコ系VTuber KIWAMU(きわむ)さんです。第1回のテーマは、化石燃料を使った発電。工学研究科 博士課程後期修了のメンターが、わかりやすいスライドで説明します。まずは、肩書になっている「産業エコ」って何?という話から。参加者に「産業エコ」という言葉を知っている人は残念ながら、いなかったのですが、SDGs(エス・ディー・ジーズ、Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)は、ほとんどの人が聞いたことがあると思います。その「持続可能」って何?を追求するのが、産業エコ=産業エコロジーという学問です。エコロジー(生態学)は、わかりやすく言うと、地面から植物が生えていて、その植物を草食動物が食べて、その草食動物を肉食動物が食べて、肉食動物が死骸となって、地面が吸収して養分となって、また植物が生えて、草食動物が食べて…という自然界の生き物のサイクル。これを産業にあてはめたら持続可能な産業になるのではないか…と考える学問が産業エコロジーです。ものを作って、使って、捨ててリサイクルに回すときに新しいものを作ったり、捨てた後でうまく燃やしてエネルギーを作ったり…とサイクルを作って、産業を持続可能にしていこうとしているわけです。では、エネルギーとは何でしょうか?ニュースなどでよく聞く言葉ですが、きちんと定義をすると、仕事をすることができる能力のことです。その、仕事とは何でしょうか?こちらは、力を加えて物体を移動させること。「力の大きさ」×「移動距離」という式で求められます。単位は「J(ジュール)」です。仕事に関しては、物体に同じ仕事をする場合、どんな道具を使っても、仕事の大きさは変わらない、という原理があります(仕事の原理)。エネルギーや仕事、仕事の原理は、中学3年の理科の教科書に出てくる言葉だと思います。例えば荷物を持ち上げることは、運動エネルギーを位置エネルギーに変換することでもあります。そこでお次は、エネルギーの変換についてです。参加者に、電気エネルギーを熱エネルギーに変換している身の回りの例を出してもらったところ、電気ストーブ、IHコンロがまず挙がりました。電子レンジも出ましたが、いったんマイクロ波(振動)という力学的エネルギーに変換しているので、ストレートに電気エネルギーを熱エネルギーに変換しているわけではないそうです。冷蔵庫について、メンターは、「温める効果を考えがちですが、冷める効果も重要なエネルギーの変化なので、良い例ですね」と言って、ペルチェ素子に言及しました。扇風機は、羽根を回して、起こった風で、結果として私たち人間が涼しく感じるものなので、むしろ電気エネルギーを力学的エネルギーに変換している例ではないか、とのことでした。ドライヤーは温風を出すので、例として適切だそうです。「周りにいろいろありますね」と、参加者も改めて驚いた様子でした。反面、「熱エネルギーを電気エネルギーに変換している例は、難しいです、、、」という声が上がりましたが、それは、このあと出てくる火力発電です。ここまでで、エネルギーと熱に大きな関係があることがわかってきたかと思います。ちなみに、化学エネルギーから力学的エネルギーへの変換の例として、爆発が挙がりました。トンネルを掘るときや建物を解体するとき、ダイナマイトを使って爆破します。ダイナマイトの原料はニトログリセリンですが、ニトログリセリンは窒素の化合物である硝酸からできています。メンターのもうひとつの専門、窒素につながりました!ところで、エネルギー変換って、好きなだけできるのでしょうか?無駄なく100%、エネルギーを変換することはできるのでしょうか?エネルギー変換の前後で、エネルギーの総量は変わりません。これはエネルギー保存の法則と呼ばれていて、中学3年の理科の教科書に出てくるキーワードだと思います。実際にはエネルギーが少なくなったように思えることもありますが、それは摩擦熱や振動など、他のエネルギーにも変換されているからです。特に熱は、周囲に伝わりやすく、拡散しやすいため、他のエネルギーに変換する際、無駄が出やすいです。高校の物理基礎の教科書には、熱力学第一法則が出てきます。熱の作用によって仕事が生み出されるすべての場合に、その仕事に比例した量の熱が消費され、逆に、同量の仕事の消費においては同量の熱が生成される、という経験則に基づいた原則です。ちょっと難しいなあと感じる人は、熱に関するエネルギー保存の法則と考えるといいと思います。わかりやすくポイントを指摘すると、逃げてしまって無駄になる熱エネルギーがありますよ、ということです。ついでに、熱力学第二法則を見ておきましょう。こちらは、低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に、他に何の変化も起こさないようにすることはできない、という内容で、通常の課程では大学で学ぶことになります。「なぜ熱力学第一法則等の熱力学法則が成り立つのでしょうか?」と興味をもった未来の科学者もいました(将来の活躍が楽しみです)。ここではまず、エネルギー変換にはロスが伴うこと、を押さえておきましょう。そして、お待たせしました、いよいよ本日のテーマである火力発電、化石燃料を使った発電に入ります。日本の発電はどのように行なわれているのでしょうか?資源エネルギー庁のwebサイトに掲載されている「総合エネルギー統計」の2022年度速報値のグラフを見ると、石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料への依存度が84%にもなっていることがわかります。石炭火力発電は、石炭を粉にして燃やして、電力に変換する方法です。昔は国産の石炭を使っていましたが、今では輸入が多くなっています。この石炭火力発電への風当たりが強くなってきていて、COP(コップ、国連気候変動枠組条約締約国会議)と呼ばれる、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)を締約した国と地域が出席する会議では、将来的に石炭火力発電をなくす方向で議論が進んでいます。石油火力発電は、保管や運搬が楽というメリットがありますが、大部分を輸入に頼っています。LNG(液化天然ガス)火力、その他ガス火力発電は、燃やした時に出る二酸化炭素が少ないというメリットはありますが、冷やして液体にして保管・運搬するという手間がかかります。ここで、参加者から質問が出ました。「風力はないのですか?」グラフでは、化石燃料以外の発電方法は、原子力、水力、再エネ等、となっていて、再エネ等に、風力はじめ地熱、太陽光などが含まれています。ただ、なぜ再生可能エネルギーの中で水力だけ、独立の項目になっているのか、気になります。メンターによると、日本は戦後まもなくまでは水力発電の割合が多い、水主火従という発電構成でした。いわば水力は立ち位置が違うので、火主水従となった現在でも独立の項目になっているのかもしれません。さて、化石燃料を使った発電に戻ります。燃料はいろいろありますが、やっていることは熱エネルギーを最終的に電気エネルギーに変えることで、要は同じです。具体的な発電の方法はさまざまで、汽力発電、内燃発電、ガスタービン発電、コンバインドサイクル発電の4つの発電方式が紹介されました。最後のコンバインドサイクル発電は、ガスタービンと蒸気タービン(汽力発電)を組み合わせて熱エネルギーを効率よく利用する発電方式で、今、日本のほとんどの火力発電所はこの方式になっています。その仕組みについても図を見ながら学びましたが、最新鋭の発電所では、発電効率は63%にも達するそうです(一般的な火力発電では約40%)。化石燃料を使った発電は、燃料を燃やす際に排ガスとして、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガス(GHG)を排出するので、環境への影響が気になります。そのため、化石燃料を使った発電の改良、つまりエネルギー変換の効率を上げることは、地球温暖化の対策のためにも重要となります。ここからは質問タイムです。参加者「火力発電以外に熱から電気に変換する方法はありますか?」メンター「あります。例えば、ゼーベック素子は、基板の左右の温度差から電流が流れるものです」参加者「電気から熱はたくさんあったので気になりました」メンター「いい着眼点だと思います。新しい研究テーマが見つかるかもしれませんね」参加者「ダイラタンシーは力学的エネルギーから化学エネルギーへの変換になってないですかね」ダイラタンシーとは、ゆっくりさわったときはドロドロしているのに、素早くさわったとき固くなるという現象のことです。メンター「構造変化なので、化学エネルギーへの変換とは言えないですね」参加者「生物では力学的エネルギーから化学エネルギーになることがあるんじゃないでしょうか」参加者「咀嚼することで食べ物が化学変化するとかでしょうか?」と話が広がる中で、お開きとなりました。第2回(6月3日20:00-21:00)のテーマは、再生可能エネルギーを使った発電です。申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。参加費は無料、前提知識は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。2024.06.02 06:19
5-6月・学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)のお知らせこんにちは。2024年5月-6月は学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2(物理・環境)を開催します。【学術系Vtuberと学ぶゼミ・概要】日時: 基本的に毎週月曜 20:00~21:00使用ツール:Google Meet対象:10歳から19歳ならばどなたでも(20歳以上もオブザーバー参加可能)参加費:無料用意する物:特になし申込:メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOK(疑問、質問もこちらまで)【シーズン2(5月27日,6月3,10,17日 それぞれ20:00-21:00)】テーマは物理学、特に原子力をはじめとするエネルギーにフォーカスします。第1回 化石燃料を使った発電について第2回 再生可能エネルギーを使った発電について第3回 エネルギーと環境問題について第4回 それぞれの振り返り(もしくは次世代のエネルギーについて)学術系VtuberのプロフィールKIWAMU(きわむ)産業エコ系VTuber 工学研究科 博士課程後期修了大学院から窒素についての研究に携わりはじめ、在学中・特任助教時代・そして現職にいたるまで何だかんだで窒素や環境と縁のある生活を送ってきています。最近では専門としている窒素と産業エコロジーについて、いろいろな人に興味をもってもらうためにVTuberとしても活動をしています。今回はエネルギーをテーマとして、物理的な側面や環境的な側面からお話しする予定です。エネルギーの基礎から利用方法そして環境に与える影響等について、みなさんと考えるきっかけになればと思っています!2024.05.10 05:55
学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン1第4回の報告と予告こんにちは。学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン1(生物・生命科学)第4回(2024年4月1日@Google Meet)の報告をします。メンターは、学術系Vtuber 某国立大学大学院博士後期課程3年 生命燐(いのちりん)さんです。第4回のテーマは、遺伝子工学の現在と未来、mRNAワクチンの開発。mRNAワクチンは、新型コロナウイルス(COVID-19、コヴィッドナインティーン)への対策として開発された革新的なワクチンで、従来のワクチンとは異なる作用メカニズムを持っています。それがどういう技術でできているかという点を、DNAの二重らせん構造の美しさに魅せられて研究の世界に入ったメンターが、わかりやすいイラストを使って説明してくれました。まずは感染症の歴史から。病原体が判明している19世紀以降の感染症は、ハンセン病、マラリア、腸チフス、結核、コレラ、ジフテリア、破傷風、ペスト、赤痢、梅毒、百日咳と、たくさんあります。医療技術の進歩、公衆衛生の改善、ワクチン開発などにより、多くの教訓と対策が講じられてきました。そして、2019年に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、SARSコロナウイルス2がヒトに感染することによって発症する気道感染症で、ワクチンとしてmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンが初めて使用されました。そもそもウイルス感染において、どのように免疫機構が働くのでしょうか。細胞の表面にウイルス分子がやって来て、もし入り込んでしまえば感染し、細胞のシステムを乗っ取られてウイルスが増殖することになります。しかし、人間を含む多くの生物は、侵入した病原体に対抗するために複雑な免疫システムを備えています。免疫機構には、病原体から自己を守るために働く2つの免疫システムがあります。1つは自然免疫です。迅速に反応し、感染の初期段階で病原体に対抗します。特定の病原体を識別することなく、広範囲の病原体に対して同じ方法で反応するのが特徴です。もう1つは獲得免疫です。感染後数日を要しますが、感染した病原体に対して高度に特化した反応を展開します。特定の病原体や抗原に対して効果的に反応し、特化した抗体を用いて識別するのが特徴です。ワクチンは後者の獲得免疫を誘導するためのもので、弱毒化したウイルス、つまり病原体そのもので、これを摂取することで免疫を獲得します。これにより、重い病気を発症することなく免疫を得て、本番の感染に備えることができます。さて、上で挙げたようなこれまでの感染症に対して開発されてきたワクチンはすべて、タンパク質に由来するワクチンでした。ここでおさらいとして、セントラルドグマの流れ、タンパク質の持つ特異的な基質を認識する能力について押さえておきます。DNAの塩基配列は、RNAに転写され、次に、タンパク質のアミノ酸配列に翻訳されます。タンパク質は、アミノ酸鎖から構成される分子で、触媒作用、運搬と貯蔵、セルシグナリング、免疫応答、細胞運動など重要な機能を担います。触媒作用を担うタンパク質は酵素と呼ばれ、この酵素によって化学反応が起きます。こうした化学反応では、鍵と鍵穴のように、どの基質にどの酵素が作用するかが決まっています。従来のワクチンはタンパク質自体を摂取するものですが、mRNAワクチンは、スパイクタンパク質というタンパク質の情報を持ったRNA分子を取り込んで、体の中でタンパク質分子に変換する点が、従来のワクチンと異なります。では、どうやってRNA分子を送り込んでいるのでしょうか?mRNAワクチンの構造を詳しく見ていきます。メンターによると、ウリジンを1-メチルシュードウリジンに置換することで、mRNAは細胞内での早期認識と分解を回避し、スパイクタンパク質の生産効率を高めます。ここで、質問が出ました。「ウラシルではなく、ウリジンなのですか?」DNAを構成する基本単位はヌクレオチドと呼ばれ、塩基・糖・リン酸からなります。塩基はA(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)の4種類です。RNAはDNAと同じように、ヌクレオチドがつながってできていますが、塩基が1つ異なり、TではなくU(ウラシル)が含まれます。糖の化学的な構造も異なっています。塩基と糖の結合体をヌクレオシド、そこにリン酸が結合したものをヌクレオチドと呼びます。RNAにおいて、ウラシルのヌクレオシド形式はウリジン、ヌクレオチド形式はウリジン一リン酸(UMP)です。「シュード」は、ニセ、のような意味なのだとか。mRNAワクチンで使われている1メチルシュードウラシルの構造を見ると、ウラシルに似ていますが、これがもしウラシルのままだったら、自然免疫によってRNA分子はバラバラにされてしまいます。ウラシルを1-メチルシュードウラシルに変えることで Toll-like receptor(TLR)の認識を免れ、分解されにくくなるーーという論文を発表したのが、2023年のノーベル生理学・医学賞を受賞したカタリン・カリコ博士、ドリュー・ワイスマン博士です。少しだけ違う分子に置き換えることが、mRNAワクチンが自然免疫を回避し、体の中でのタンパク質合成を助ける工夫となっているのですね。ここで、タンパク質のイメージを確認するため、Protein Data Bank(PDB)で「グアノシンおよびポリUと複合体を形成したサルTLR7の結晶構造」(参加者が和訳してくれました)を見ました。さらに、mRNAの安定性に関与している PolyA について、「Aがいくつかは関係しますか?」という質問が出ました。mRNAワクチンには、Aが100~150ほどあるそうです。酵素は末端から分解していくので、大事なところを守るためにAがたくさんついているとのことでした。メンターが強調したのは、カリコ博士やワイスマン博士の研究だけでなく、いろいろな研究によってmRNAワクチンはできている、ということです。鋳型DNA(RNAを作るためのDNA分子)の作製(前回見た CRISPR/Cas9 など)や、キャップ付きmRNAの合成、といった高度な遺伝子組み換え技術、自然免疫系や獲得免疫系のメカニズムの理解、ドラックデリバリーシステム(届いてほしい組織に選択的に薬剤を届ける技術)、PEG(ポリエチレングリコール)による物性の調整や安定化(容易に分解されないようにする)、製剤技術、そして治験、それらのどれが欠けてもmRNAワクチンは誕生しなかった、ということが理解できました。ここからは質問タイムです。参加者「コロナだけでなく、コロナワクチンにも後遺症があると聞いたことがあるのですが、どこが原因となりやすいのですか?」メンター「今回のワクチンは初めて実用化されたタイプのワクチンです。そのため、短期的なスパンでの有効性、安全性は確認されていますが、長期的な影響には、わからないところがあります。厚生労働省の調査報告によると、ワクチン接種後に長期的に見られる症状とワクチン接種の因果関係が直接結論付けられる事例は未だ報告されておらず、ワクチン接種による後遺症についてはさらなる詳細な調査が必要な状態である、ということです。生命は非常に複雑なシステムなので、完璧に影響を予測することは難しいです。後遺症の原因となるとすれば、PEGなどの異物の影響などが考えられるでしょうか……体に入った異物は免疫システムによる排除や代謝によって対処されるのですが、作り出された新たな抗体や代謝中に作られる物質などによる影響を完全に評価、予測することは難しいです...…そういったことが考えられるのかもしれませんね...…長期的な研究、評価が必要でしょう。新しい感染症や新しいワクチンは、いろいろな情報が錯綜する分野ですが、せっかく科学が発達している時代に私たちはいるので、疑問に思ったところを、『科学的にはどういう研究があるのだろう』『今どういう説が今一番もっともらしいのだろう』と自分でも確かめられるようになっていけたらいいと思います。それが科学を学ぶ意義じゃないでしょうか。少し難しいかもしれませんが、論文を検索するための検索エンジンがあります。pubmedという、医学系に特化した論文データベースもあります」最後は、「院試は難しいですか」「学部の時から院の研究室に関われますか?」「修士と博士は何というか、どう違うのですか?」「生物学を学ぼうと思った理由を教えてください」といった、10代らしい質問が出て、メンターは熱心に答えてくれました。全4回のゼミを通して、生命燐さんから、科学が日々更新されていること、科学の世界が楽しいということを教わりました。今後も YouTube や X(旧Twitter)で生命燐さんから学んでいきたいと思います。学術系Vtuberと学ぶゼミ・シーズン2は、5/27 6/3,10,17 を予定しています。テーマは物理学、特に原子力をはじめとするエネルギーにフォーカスします。詳しい内容が決まりましたら、このウェブサイトでお知らせします。申込みは、メール( info@thinkers.jp )、Facebook( @jp.thinkers )のメッセージ、X(旧Twitter)( @jp_thinkers )のDM、いずれでもOKです。参加費は無料、前提知識は必要ありませんので、お気軽にご参加ください。2024.05.08 06:27